
[日時]1月18日(日) 13:00開場/14:00開演(終演予定:16:30)
[料金]チャージ1,000円+当日1ドリンク以上オーダー
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W.A.モーツァルト(1756-1791)はその生涯に2曲の協奏交響曲(マンハイム楽派がそのスタイル確立した複数のソロ楽器を持つ協奏曲)を作曲したとされている。いずれも1777年から1778年にかけて訪れたパリでマンハイム楽派の影響を受け作曲された。
1曲は1979年に作曲された『ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響 変ホ長調 K.364(320d)』。これはピアノ協奏曲群を除けば、晩年のクラリネット協奏曲と肩を並べるモーツァルトを代表する協奏的作品と言ってよい。華やかに上昇するヴァイオリン、静かに深い世界へ向かうヴィオラという2つの楽器の性格はうまく使い分けられ、華やかながらも必ずどこかに陰影を帯びたモーツァルトの芸術性がうまく表現されている。
もう1曲はパリ滞在中の1778年4月、コンサートシリーズ「コンセール・スピリチュエル」で演奏するために作曲された『フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲 変ホ長調 K297b』。
だがこの作品は何らかの邪魔(陰謀)が入り、結局演奏されなかった。スコアも消失している。
ところが、ドイツの音楽学者オットー・ヤーンの遺品の中から、それまで知られていなかった「オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲」の筆写譜が発見され、「この筆写譜は消失したフルート、オーボエ、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲の編曲譜である」という説が発表された。
この説は広く受け入れられ、1905年のケッヘル第2版ではこの筆写譜をオリジナルの真正の編曲とみなした。しかしなぜソロ編成がフルートからクラリネットに変更されたのかという疑問は残ったまま。また本作はすべての楽章が同じ変ホ長調で書かれている点や、クラリネットなどの用法がモ-ツァルトのそれにそぐわないという点をもって、偽作の可能性が非常に強いという判断が下され、1964年のケッヘル第6版では、「疑作、偽作」を示す「Anh.C14.01」という番号が与えられた。そしてオリジナルが消息不明のまま「フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲」はK.297Bとしてその存在だけが本編に組み入れられた。
本作をモーツァルトの真作と見る研究者もいるが決定的な証拠が欠けているため、散逸した「フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲」の自筆稿の発見でもない限り、真偽の決定が困難な状況である。
ただ、これまで演奏され続けてきた『協奏交響曲 変ホ長調 K297b(K.Anh.C14.01)』がモーツァルトの真作でなかったとしても、モーツァルトに負けずとも劣らない腕の立つ作曲家によって、この珠玉の名曲が生まれたことを、我々は素直に喜び聴き続ければ良いのではなかろうか?
今回の『邂逅』は特別編として、この2つの協奏交響曲をそれぞれ世界初録音となるSPレコード期のオリジナル盤、そして戦後ウィーンに進出した米ウェストミンスター社が、当時のウィーン・フィルの首席奏者らをソリストに録音したLP初期のオリジナル盤で聴く、という企てである。
SPレコードは1926年製クレデンザ蓄音機、LPレコードは1970年代初頭ELAC BENJAMIN Miracord 40Aで再生。
これら4つの貴重なレコードが揃う機会など滅多にないと思われる。乞うご期待!

[演奏盤]

協奏交響曲 変ホ長調 K297b(K.Anh.C14.01)
エーリヒ・ヴェンツケ(オーボエ)
アルフレッド・ビュルクナー(クラリネット)
マルティン・ツィーラー(ホルン)
オスカル・ローテンシュタイナー(ファゴット)
近衛 秀麿(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1937年1月4日 録音
仏Columbia LFX 508/511

協奏交響曲 変ホ長調 K297b(K.Anh.C14.01)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
レオポルド・ウラッハ(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ヘンリー・スウォボダ(指揮)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
1949年 録音
米Westminster WL 50-20

協奏交響曲 変ホ長調 K.364(320d)
アルバート・サモンズ(ヴァイオリン)
ライオネル・ターティス(ヴィオラ)
ハミルトン・ハーティ(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1933年4月30日 録音
英Columbia DX 478/481

協奏交響曲 変ホ長調 K.364(320d)
ヴァルター・バリリ(ヴァイオリン)
パウル・ドクトル(ヴィオラ)
フェリックス・プロハスカ(指揮)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
1951年録音
米Westminster WL 5107

